一口に会社売却と言ってもいくつかの種類があります。ですが、中小企業の経営者が意識すべき方法は3つです。以下に主な中小企業のかいしゃ売却方法をまとめました。

【主な中小企業のかいしゃ売却方法】

売却価格 負担手数料 売却時間 売却手間 売却範囲
株式売却 会社まるごと
事業売却 対象事業のみ
会社分割後の売却 対象事業のみ

 

M&Aという言葉を目にすることがありますが、これは「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略で、複数の企業がひとつになったり、他の企業を買い取ったりすることです。中小企業の場合、合併は稀で、大半が売却することになります。また、売却には、会社を丸ごと売却する株式売却(譲渡)、会社ではなく一部の事業のみを売却する事業譲渡、会社の一部事業等を切り出し新たな会社とし、その新たな会社を売却する会社分割による方法などがあります。ただし、3つの方法で売却価格、負担手数料が変わるわけではありません。どの方法を選択するかは、売却の範囲と簿外債務リスク・取引先数の程度・必要な許認可等によって決まってきます。

向いている会社
株式売却 簡単。黒字で決算書をしっかりと作りこんでいる会社向き。
事業売却 ちょっと手間。赤字や簿外債務のリスクがあり、取引先が少ない会社向き。
会社分割後の売却 ちょっと手間。赤字や簿外債務のリスクがあり、取引先が多い会社向き。

 

株式売却(譲渡)

株式売却(譲渡)とは、現株主が、買い手に株式を売却する行為です。これにより所有権が移転し、一般には経営権も譲り渡す事になります。株主と経営者が変わるだけであり、新たに契約を結ばずとも日常の取引は継続されることになります。見ての通りシンプルで最も手間がかかりません。ただし会社を丸ごと売却する行為であるため、過去の賃金未払等が発生した場合には会社が支払う義務があります。売却後に発覚した場合には新たな株主が負担することになるため、よほど決算書がしっかりしていない限りは、買い手は選びたくない方法です。
株式売却では、全株式を売却することが一般的ですが66.6%超、50.0%超というケースもあります。株式会社の最高意志決定機関は株主総会です。中でも特に経営上重要な事項は株主総会の特別決議にて決議され66.6%超の株主の賛同が必要です。それに準じる重要事項は普通決議にて決議され、50.0%の賛同が必要です。買い手は、株式譲渡後に自らの意思で経営上の重要事項を決議したいために株主比率を強く意識しているわけです。

事業売却(譲渡)

事業売却(譲渡)とは、会社の一部の事業のみを売却する行為です。売却する対象は、事業継続に必要な契約、資産、負債、従業員などです。株式売却との2点の違いを理解して下さい。一つは売却対象です。株式売却では文字通り株式が対象となりますが、事業売却では株式でなく事業継続に必要な資産、負債、取引上の契約、従業員が対象になります。もう一つは包括と個別の違いです。株式売却では取引先、従業員と新たな契約を締結しなくとも包括的にこれまで通りの取引、雇用が継続されます。事業売却では全ての契約を個別に譲渡又は締結し直す必要があります。
例えば、A社がB事業のみを部分的に売るとしましょう。B事業は100社から原料を仕入れ、50社に製品を販売していました。この場合、仕入れ先100社、販売先50社、合計150社すべてと個別に話し合い、契約当事者を売り手から買い手に変更しなければなりません。メインの仕入れ先や販売先と契約が移転できなかった場合、事業売却が成立しなくなるリスクがあります。同様に従業員に関しても、いったん売り手との雇用契約を解除して、買い手と雇用契約を結び直してもらう必要があります。
事業継続で重要な人物が買い手との再雇用を拒否した場合は売却が不成立となるリスクがあります。このように事業売却では販売先、仕入先、雇用契約等の事業に必要なすべての契約を再締結する必要があります。事業売却はシンプルでかんたん手続きの株式売却と比較し、手続きが煩雑で事務負担が大きいことがデメリットと言えます。逆に事業売却のメリットは、買い手が不本意にも簿外債務などを譲り受けてしまうリスクが無い事です。

会社分割後の売却

会社分割とは、売りたい事業だけを切り出して法人化し、100パーセント子会社とし、その上で当該の子会社を売却するという方法です。切り出して法人化することで、部門にまつわる契約や従業員は、すべて包括的に子会社である新会社に引き継がれます。そのため、新会社を売却すれば、事業売却のように個別の契約、個別の雇用契約に対して、契約変更を取り付ける必要はありません。ただし会社分割では公告(名前のとおり公に告げる行為。官報などに1ヶ月掲載など)しなければなりませんので時間を要することになります。

 

 



会社を売りたくなったら読む本

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M&A市場の状況から、「事業継承、売却、廃業どれがいいの?」、「もし売ったらいくらで売れる?」といったことを売り手となる中小企業経営者の立場になって書いています。現在は売却を考えていなくても、将来はその可能性がある、あるいは自社の値段を知りたいという経営者にオススメです。是非、書店にてお求めください。